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BLACK=OUT 2nd

あとがき

 「二番目の物語」BLACK=OUT 2nd、これにて完結。ということで、ここまでお読み頂きました方、本当にありがとうございます。
 私の処女作であるBLACK=OUTの続編である今作ですが、一作目の時点で今作の構想はありましたので、心持ちとしてはようやく一作品書き終えた、といったところです。
 何かと昔の恋人と比べる男に女性が「比べないでよ」なんて怒ってしまう流れはドラマなどでもお馴染みかと思いますが、じゃあいっちょこれを肯定してみようか、というのが今作のテーマの一つとなっております。ですが誰に話しても「えっそれ面白いの」なんて反応でしたので、なかなか面白そうに伝えるのは難しいなと思った次第ですが、いかがでしたでしょうか。
 続編と言うことでタイトルに付いた「2nd」も、上手くテーマとシナジーを発揮してくれたと思います。
 そして、この既にキャラクターが確立している作品の続編というのは私としても初の経験で、いくつもの「どうしよう」をどうにかする必要がありました。
 まず、文体も含めた作品の雰囲気を、BLACK=OUTのそれに戻す必要があります。
 前作「屠殺のエグザ」と比べると重く、硬い雰囲気の作品ですし、特に意識して文体をコントロール出来るほど器用ではありません。書き手の気分をBLACK=OUTのものに切り替えねばなりませんでした。
 そして、やはりキャラクターをどう扱うかという問題は大きなものです。
 BLACK=OUTを読んで頂いた方にとって日向やマークスは馴染み深いキャラクターでしょう。一方、2ndで初めてBLACK=OUTの世界に触れたという方もいらっしゃるはずです。彼らと再会する方には懐かしく感じてもらうと同時に、彼らを知らない方には反感を持ってもらいたい。彼らを知っているかどうかでどちらを味方するのか変わってくる。だけど主人公は一貫して征二――そんな描き方を目指しました。

 一作目と共通して、「父親」という存在を、いくつかのテーマのうちのひとつとして据えています。父親と対立し乗り越えるという流れは一作目と同じですね。他にも細かいところで一作目を意識した表現を意図的に用いています。
 一方、構成の取り方は思い切って大きく変えました。
 各章ごとに特定のキャラクターにスポットを当てた一作目に対し、今作では征二とライカを軸に、B.O.P.陣営、ノースヘル陣営を、補完する形で埋める構成にしています。
 章の構成も、今作では戦闘をメインに扱っておらず、キャラクター描写に時間を割きました。戦闘シーンが好きな方には少々物足りなかったかもしれませんが、今作を表現する上では必要なことだったと考えています。
 構成と言えば伏線ですが、私は伏線を張るのが苦手なため、今作においてもそれらしいことはほとんどしておりません。唯一水島の一人称に関しては、プロローグから一貫してコントロールしていますので、もし時間があるなら読み返して頂けると、水島の思いが読めて面白いのではないでしょうか。

 さて、ではここからは毎度お馴染みのキャラクター別解説(?)です。

水島征二

 こと本作においては、彼の存在そのものがテーマである、と言ってもいいかもしれません。自己を確立するために足掻く青年、自分という存在の独自性を求める姿は、多くの人にとって重なるところがあったのではと思います。
 この物語は彼の成長物語であり、そして彼が「家族」を手に入れる物語です。
 「父」と戦い、「父」を超える。BLACK=OUTの根底のテーマですね。
 最も気に入っている台詞は、日向が復活し、迎えに来たライカに言った「僕は、偽物だったよ」という台詞です。ここで征二の存在は一度壊れたんですね。
 征二は変わりました。それは多くの人が変えることの難しい部分で、きっと乗り越えられないまま生きていく障害です。それをやってのけた征二は、やはり日向の別人格だけはあるのかもしれません。

ライカ=マリンフレア

 本作のヒロイン、そしてノースヘル側の主人公。彼女はノースヘルと征二を結びつけるために活躍しました。
 ノースヘル側にもスポットを当てて書こう、というテーマもあったので、ライカにはその部分を多く担当してもらっています。ノースヘルとB.O.P.の対比なども面白かったのではないでしょうか。
 その立ち位置上、どうしてもマークスと衝突することになるライカですが、旧作ヒロイン対新作ヒロインの構図って、やっぱりいいですよね。
 ライカと言えば、征二を取り戻しに来たマークスに啖呵を切るシーンがとても気に入っています。ライカは色々な人・勢力と対立するキャラクターなので、何だかんだ「喧嘩」のシーンが多いです。互いが互いのエゴをむき出しにぶつけ合う口論のシーンはキャラクター性を書きやすいので楽しいですね。

水島柾

 本作のラスボスで征二の保護者。先にも書きましたが、彼の一人称はある種の伏線となっています。水島の征二に対する思いと、日向伸宏との約束の葛藤、どちらも彼にとっては本心で、きっとどちらかを取ることなど出来なかったのでしょうね。
 この物語の主人公は征二ですが、視点を変えれば、水島が二番目の家族を得る物語、とも言えます。「二番目」の征二が水島の「二番目」になる、それがこの物語の核なのかもしれません。

マークス=アーツサルト

 前作のヒロインかつ今作のライバル。
 彼女のキャラクターの描き方こそ、大きく変更された部分です。そういう意味においても、彼女はB.O.P.側の代表という立ち位置と言えます。
 日向を取り戻すためならなりふり構わない、その「当たり前」は彼女を知る者ならばよく理解出来ると思いますが、そうではない人にとっては理解不能の恐ろしさを持っていると思います。その恐ろしさは、後者である征二との間により大きな壁を作るのです。
 征二が日向の記憶を得た後にマークスに対して理解を示すようになるのは、この表現であったりします。
 先に挙げた「前作キャラクターの描き方」というテーマに対し、最も端的に解決方法を表したのがマークスというキャラクターでしょう。
 私はこのマークスも格好良くて気に入っています。

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 ノースヘル・マリンフレア隊の一人で、通称フォー。宮葉小路以上の数の式神を行使する式神使いで、ライカに惚れてるやんちゃキャラ。ライカを助けたことから、ライカに次いで征二への好感度が高い男です。割とチャラい感じなのに意外と奥手で、結果的にライカを征二に掻っ攫われます。ライカは全くフォーを意識している様子はなく、なんとも悲惨です。
 これはフォーに限らずなんですが、ノースヘルは全体主義的な傾向にありながら、その構成員は個人主義的な行動を取るという不思議な側面があります。フォーの行動原理の中心はライカで、ライカの利益に則しようとしますが、その結果ライカを失うことになるわけですね。
 ライカの味方は自分の味方――とは限らない。その、ある意味で当たり前のことを、フォーは失ってから気付くのです。

近衛雅

 今作のロリ枠。しかものじゃロリじゃ。妾の可愛らしさに跪くと良いぞ。
 一作目と違って基本的に人死にのない今作において珍しく死ぬ担当。ノースヘル陣営では特に気に入っているキャラなので、ノリノリで書けました。
 近衛はノースヘルでも特に狂っている方なのですが、奇矯な言動と容姿から、あまりそれをプッシュしすぎないように気を付けました。もっとも、物語設計の観点から、B.O.P.のメンバーをより恐ろしく描く必要があったため、そんなに気を付ける必要もなかったかもしれません。
 プロットでは征二にまとわりつく役回りだったんですが、どうも上手く動いてくれず、気が付いたらセブンといい感じになっていました。全く思い通りに動いてくれない気紛れさは、近衛の特徴だと言えるでしょう。

セブン=オーナイン

 ノースヘルの男組が両方とも数字になっちゃったなぁ、と後から命名に後悔したパターン。フォーはこだわりがあって、セブンはこだわりがなくてこうなったんですが、経緯はどうあれ被ってしまったのはよろしくなかったなと思います。
 クールイケメン枠のセブンですが根っからの女嫌いで、そのために近衛とペアを組むことが多い、という設定が走り出した結果、なんかこの二人ええ感じやん? などと書きながら楽しくなってしまう組み合わせになってしまいました。
 本編ではさらっと流した部分ですが、彼の女嫌いについての独白は地味ながらも気に入っているシーンと言えます。
 BLACK=OUTシリーズには何組ものカップルがいますが、一組を選んで短編を書くなら迷わずセブンと近衛ですね。甘すぎず、ぶっきらぼうなセブンが振り回され、好戦的な近衛が弱さを見せるこの組み合わせは最強だと思うのです。
 書くかって? 無理ですね!

 さて、BLACK=OUTはここで一区切りとなりますが、別の展開を考えていないわけではありません。まだまだBLACK=OUTでやりたいことはいくつも残っています。ですが、それはまた今度。
 「屠殺のエグザ」終盤に変えたキャラの書き方は、今作を書くことでかなり手になじんだように思います。少なくとも、自分が何を書きたいのかは、見えてきたかな、と。
 その「書きたいこと」は、次回作にぶつけると言うことでひとつ。
 最後に、長々とお付き合いありがとうございました。また次回作を読みに来ていただけることを願いながら、これにて。

二〇一六年七月 んぼ

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